2018年6月のロシアW杯に向けていよいよ準備も最終局面を迎えている。

我らが日本代表監督のハリル・ホジッチ監督も最終的な選手選考に頭を悩ませているのではないだろうか。

W杯予選からハリル監督はとにかく“勝負強い”監督として知られる。

絶対に負けられない試合。

結果を出さなければならない状況下に置いて彼が下す決断は面白いほどにハマる。

今回は、そんなハリル監督の勝負強さを前回のW杯で無名のアフリカの弱小国アルジェリアをW杯で16強まで導いた事例を基に紐解いていくことにする。

アルジェリア代表で輝かしい実績を残した見事なまでの手法

実は、ハリル監督はこれまでに3回アフリカで指揮を握った経験がある。

【1997年】
アフリカの名門クラブ“ラジャ・カサブランカ”を率いてCAFチャンピオンズリーグで
勝を果たす。

【2008~2010年】
コートジボワール代表監督。最も大きなミッションは2010年アフリカネイションズカップ優勝、2010年のワールドカップ出場であったが、どちらも果たすことができずに解任。

【2011~2014】
アルジェリア代表監督。W杯ではアルジェリアを16強まで導き、優勝国ドイツを延長戦まで追い詰め、試合終了後にアルジェリアの全選手・全スタッフと共に熱い抱擁を交わしながら涙を流した姿は多くの人の心を打った。
 その人柄と確かな結果から、今でもアルジェリアでは“爆発的な人気”を誇る。

この中でも、特に特筆すべきはW杯当初はグループステージ敗退と目されていたアルジェリアを16強にまで導いたことであろう。

それでは、ハリル監督は“コントロール”が難しいとされ、多くの監督が就任を望まないとされるアフリカの代表監督という仕事を上手に成し遂げたのであろうか?

ハリル監督がアルジェリア代表を16強まで導いた要因とは!?

「選手のスカウト」×「規律」×「戦術」

これが、著者が考える成功の秘訣である。

それでは、一つずつ見ていく。

まずは、「選手のスカウト」について。

“アルジェリア代表時代は選手を発掘することが大きな仕事であり、同時に困難を極めた”
(ハリル監督)

アルジェリア代表時代のハリル監督が特に力を入れたことは選手の発掘。

特に今や世界的なスーパースターとして世界中のクラブから熱視線を受けている“リヤド・マフレズ(レスターシティ)”の発掘はW杯16強と同じくくらいの価値があるのではないだろうか。

実は、マフレズはW杯の2ヶ月前までは2部リーグ(※ル・アーブル)でプレーする選手だった。

また、アルジェリアには通常用意されているはずの「選手リスト」なるものが存在しなかった。

故に有名なチームでプレーしている!外国でプレーしている!
など、選手を“肩書”で選ぶ風習があった。
2部リーグでプレーする選手などはこれまで代表に呼ばれた実績がないほどだった。
しかし、ハリル監督はマフレズを見るや否や、

“この選手はとんでもない逸材だ。ぜひとも代表チームに呼ぼう”

と興奮した表情で言ったという。

“肩書にとらわれない”選手選考がアルジェリア躍進の大きな要因となったことは間違いない。

ハリルが植え付けた規律とは!?

「規律」について。

アフリカのチームを率いるときに「規律」を受け付けることが最難関のミッションである。
ハリル監督が用いた手法は、

「徹底した管理」

日本代表でも行っている体脂肪率テストを初め、「体力測定」や「アルコールの禁止」などをはじめと決められた規則を守れない者は容赦なく代表から追放した。シシャ(水タバコ)を吸っていたのが発覚してメンバーから外されたMFリヤド・ブーデブーなどはその最たる例である。




ハリルが16強に導いた戦術とは!?

それでは、ハリル監督は競合達をどのようにして撃破していったのか。

そのキーワードは、

ハイプレス×速攻×堅守

である。

ハリルの代名詞ともいえる4-3‐3を基本として、前線から相手を“窒息”させるほどのプレスを90分にわたり継続する。

通常不可能に思えるようなこの戦術を規律と栄養管理で鍛え上げられたアルジェリアの選手たちは見事なまでに実践してみせた。

“ハイプレスで奪ったボールを最短距離でゴールまで”

まさにアフリカ人特有の身体能力を最大限に活かす戦術を採用し、見事なまでに表現させた。

アフリカでの経験とハリルの勝負強さの不思議な関係

ここまでハリル監督のアフリカでの経験を見てきたが、この経験がハリルのここ一番の決断力を研ぎ澄ませたのではないかと私は考える。

なぜなら、

「アフリカではあらゆることが計算通りに進まない」

からである。

実際にハリルが開催したあるキャンプではスタッフ10人に対して選手2人という事態まで発生している。

これは、協会が選手を招集する為のお金を払うことができなかったから起きたことであるが、このような予想外の状況に次から次へと襲われる。

・開催地の変更
・試合時間の変更
・選手が期日通りに到着しない
・強烈なアフリカメディアのバッシング・・・

とても片手では数えきれないほどの困難に対して、迅速かつ的確に判断を重ねていく必要がある。
結果にシビアなアフリカサッカーにおいて、敗戦=クビであるから。

このような判断に次ぐ判断を繰り返してきた監督は強い。

こんなぎりぎりの決断を重ねた結果として得た感覚を基に、”勝負所”でことごとく采配を的中させることができるのではないだろうか。